※公開終了間近！　イロモノなアタシ
あたしが小学生の頃、朝の通学路に突っ込んできた車から子供達を庇おうとしてハネられたから。


それからというもの、女手いや、男手１つで育てられた。


周囲には「亡くなったのはお父さん」だと説明してあるからいいけれど、授業参観の時にウンザリした記憶が未だに残っている。


必要以上に女性らしい装いに振る舞いは、周囲から見てかなり目立っていたから。


『ZUKA』のドア前に到着すると、クミさんは鏡で自分の顔をチェックし始めた。


好きな人に会うのに、ちょっとの乱れも許されないといった気合に女を感じる。


「ね、これで大丈夫よね？　」
「大丈夫です、クミさんはいつもキレイだし」


あたしはいつも通り汚いけれども。


「よしっ！　今日は私がオゴるからね」
「はーい」


中に入ると、浩さんは大勢の女性客を相手に忙しそうだ。


皆、浩さんが目当てで来るから、カウンターは一杯。


「いらっしゃいませ」
「今晩はー」


渋々ボックス席に座るクミさんを横目に、あたしは手伝いに入る。


「何かありますか？　」
「ごめん、氷が切れててね。買いに行ってもらえるかな？　」


優しい口調に微笑みは、女性達をトリコにする。
< 15 / 386 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop