※公開終了間近! イロモノなアタシ
車の中に戻り、森を眺めていると彼は面白い話をしてくれる。


「あの森さ、人の手が入ってないんだ」
「木が伸び放題ですね」
「人の手が入った森より、こういう場所が落ち着く」


確かに、自然をむき出しにした風景は何かありそうな予感に満ちていた。


動物が飛び出して来るかも知れないし、美味しい木の実がなっているかも知れない。


不意に胸の上に重みを感じ、下を見ると鳴瀬さんがあたしの胸の上にもたれて目を閉じていた。


眠いのを我慢していたんだ、それなのにここまで連れて来てくれた事に感謝をして、そのまま動かずにあたしも目を閉じる。


肉枕は柔らかいでしょう?


いい夢を見てね、鳴瀬さん。


ふわっと髪が胸の間をくすぐり、それが心の中までくすぐったくさせる。


恋愛っていいなあ、こんな時間があるんだもの。


自分から諦めてたけど、勇気を出して良かった。


ありがとう。


こんなどうしようも無いあたしを、好きになってくれて。



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