※公開終了間近! イロモノなアタシ
6階の宝飾品売り場は、いつ来ても静かで、セレブな奥様方が真剣に品定めをしている。


1階にもアクセサリー売り場があるけれど、そことは商品も値段も段違い。


一番安い物でも、6ケタだから。


「これ、凄いですねーダイヤのネックレス」
「本当、銀座のママでも付けてなさそうだね」


背が高くてオフホワイトのジャケットにブラウンのパンツをはいた浩さんは、どこからどう見ても男にしか見えない。


そして、あたしはそのブサイクな彼女といったところだろう。


「お姫様とか付けるんでしょうか? こういうの」
「いやー、マダムじゃないかな。昔、劇場のロビーで見た人なんて、真っ赤なドレスにこんなネックレスしてたよ」
「それ、鹿島姉妹じゃないですか? 」
「フフフ……」


確かにこの宝飾品の数々を見ていると、自分までキラキラした気持ちになる。


こんな宝石が買えるわけ無いけれど、でも、もしもらえたなら幸せかも。


そんな気持ちでショーケースから視線を上げると、あたしは声を失った。
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