※公開終了間近! イロモノなアタシ
ここは『なんばハギモト劇場』として、主に観光客を相手に喜劇を見せている。


他にも、心斎橋の近くに若手の実験劇場もあるし落語専門の寄席も運営している。


敬介に聞いたが、彼は東京デビュー組で、本拠地である大阪にはほとんど行かないそうだ。


ただし、東京でのブームが去った場合は地方に飛ばされて、そこでの成績次第でまた東京に戻れるチャンスを与えられるらしい。


若手売れっ子芸人と言えど、安泰ではないという事だろう。


笑いの総合商社として、芸能界に君臨するハギモト興行、その手法は恐ろしいほどにビジネスライクだ。


何も裏側を知らない観客達は、劇場で笑い、涙を流す。


あたしは、本当にここに入社して仕事を続けられるのか不安になった。


心のどこかにある敬介と離れる不安や、『ダメなら、バイトでもいいや。最終的には敬介へ永久就職しちゃえ』という甘えがあるのではないか?
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