※公開終了間近！ イロモノなアタシ

「泣きたいんだね、何かあった？　面接で嫌な事を言われたりとか」


優しい言葉が余計に涙を誘い出す、泣いちゃダメだって。


笑顔、営業スマイルでもいい。


何で出て来ないんだ。


「いいよ、理由は聞かないから」
「ごめ……」
「泣いていいから、志穂、よっぽど我慢してたんだね」


背中をなでる手は、いつもと変わらない愛情を感じさせる。


言いたい、でも、余計な心配をかけたら彼が仕事に集中出来なくなるんだ。


人を笑わせる芸人という職業が、こんなに重くのしかかるなんて。


「落ち着いたらさ、こっそりビールでも飲もう。ほら、買って来たから」


バッグの中には、缶ビールが２本。


しかも、あたしの好きな銘柄。