※公開終了間近! イロモノなアタシ
行ったって「大きなヤングサイズ」コーナーしか入る服は無い。


それに、店員さんが意味ありげにジロジロと見るのが苦手だから。


エレベーターに乗ると、上の階の住人のオバさんと鉢合わせた。


「あらーお出かけ? お母さんと一緒に」
「そうですのよ、ヲホホ」


お母さんのフリをするお父さんにはもう慣れているけれど、2人の顔を見比べる視線が嫌だ。


オバさんの頭の中の言葉が聞えて来る。


『こんなにキレイなお母さんなのにねぇ、どうしてこんな子が生まれちゃったのかしら? 』


と。


地下の駐車場に入り、愛車の真っ赤なベンツのキーを差す。


「じゃ行くよ」
「安全運転でお願いね」


後部座席で女優の様な大型サングラスを掛けたお父さんは、細身のタバコをふかし始める。


煙が目に染みて、思わず窓を開けた。


「ヤダ、紫外線が入るでしょ」
「大丈夫だよ、そんだけ厚塗りしてりゃ」
「シミとシワの原因なのよ! 」
「化粧も原因だと思います」


思いっきりアクセルを踏んづけて、駐車場から街に踊り出す。


行く先は……。
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