※公開終了間近! イロモノなアタシ
「おはよう、祥子ママ、シホちゃん」


振り返ると、薄いサングラスに淡い茶色の髪を短く刈り上げ、黒のスーツを着た細身の素敵な人が立っている。


「あら、仕入れ? 浩ちゃんは」
「そう、大変だよ。バイトの子が辞めたからさ、祥子ママ、いい子居ないかな? 」
「あいにくタチに知り合いは居ないのよね、ネコなら来るんだけど」


タチ=レズでの男役 ネコ=女役 という隠語を織り交ぜながら会話をする2人を見ていると、この街における見た目と性別のギャップに感心してしまう。


浩さんは二丁目でレズビアンバー『ZUKA』を経営しているマスターで、女性だ。


見た目は美男子だけれど、肝心のモノは無い。


「残念だなー、じゃ、仕込みがあるから」
「後で顔出すわよ、求人誌のヒトも来るから」
「うん、宜しく」


浩さんに別れを告げ、店の中に入る。


分厚くてキラキラのドアを開けるなり大音量の音楽が流れ出す。


そう、ショーのお稽古の真っ最中。


「祥子ママ、おはようございます」
「おはよ、ねえ、ミミちゃんのステップおかしいわよ、まるでアヒルみたい」


先生に教えるとステージのまん前に陣取って、再びタバコを口にくわえる。


すぐにポケットのライターで、火をさっと点けるあたし。
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