※公開終了間近! イロモノなアタシ
『こみね』は、木造の一軒家風のたたずまいで、いかにも芸能人御用達といった印象の建物だった。


「パパと一緒にー、よく来るのよねー」
「ああ、そう」


馴染みの店だけあって、店の人が綾女に気づくとすぐに奥の個室に案内をしてくれる。


「ここだって連絡しとかないと」


あわてて携帯を取り出そうとして、自分の服装が目に入った。


そう、いつもの様に学生然としたグレーのパーカーにデニム、おまけにスニーカーだ。


対して綾女はネイビーのパフスリーブ、更に腰へ白いリボンが付いているという甘いデザインのワンピース。


明らかにお嬢様とそのダサイ友達といった風情で、普段着のまま来てしまった事に後悔をした。


「今日だって分かってたら、もっとマシな服でも着てくれば良かった」
「志穂ちゃんー平気だよぉー、だってお客さんでしょー? 」


それもそうだ、何をヘンに気にしているのだろう。


まあ、でも綾女を連れて来て正解だったかも知れない。

< 56 / 386 >

この作品をシェア

pagetop