最後の血肉晩餐
 ――そうなんだ。悪いけどもう駅に向かってます。

時間にルーズな人、職業柄無理です。

さようなら。


あの男にお別れメールを送り、すぐさまアドレスを変えた。


この5000円の内訳は3000円が業者へ、残り2000円はさくらに支払われる。


「あいつにお別れのメール送って、アドレスを変えたよ」


「そっか。だからか。あいつさっきまで凄く殺気だってたような気がしたのに、今は死人のように動かなくなっちゃったよ」


あいつの目は確かに死んだ魚の眼のようだった。


全然、胸が痛まない。女を食い物にしている男なんか、虫唾が走る。


「美沙この2千円で美味しいものでも食べに行こうよ~楽しかったし、打ち上げ」


「きゃはは! いいね~。行こう行こう! まゆ太には感謝だね! ぎゃはははっ!」


立ち尽くしてる男に、心の中で吐き捨てるように呟いた。


松潤で成金。もてないはずないだろう? ばぁ~か。ざまぁみろ。うぬぼれやは一回死にな。


私は満足げに黒縁眼鏡をまた持ち上げた。
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