最後の血肉晩餐
 俺は当時、就職した葬儀屋の仕事で一杯一杯だったのもあった。

初めの頃は葬儀一つ一つ、その雰囲気に暗く心を落としていた時期もあった。

今の俺はプロだ。

この時期だったら余裕を持って考えられたのかも知れない。


当時の彼女は29歳を過剰に意識している。このまま何もせず、引っ張っていく勇気もなく、別れた。


――辛い事があると思い出すなんて、男のほうがなかなか忘れられないって本当かもな……。


まだ心が癒されてない、隙間だらけの俺がいた。
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