最後の血肉晩餐

「じゃあ、今付き合ったら良かったなぁ～？」


エレベーターが一階に着いた合図音と同時に恵美は言った。冗談にはとても聞こえない。咄嗟に聞こえないふりをした。


別れてから多少遊んだので、気持ちがだいぶ離れていってしまってるのも確かだから。それでも多少ドギマギしている俺もいた。


「ここにしよう？　お前鶏肉好きだろ？　鶏肉メインの居酒屋みたいだな」


エレベーターのすぐ左脇にお店はあった。右側はスーパー。買い物のついでに軽く飲む人もいるようだ。


「うん。入ろう！　なに飲もうかなぁ～唐揚げも食べよう！」


カランとエンジの木の扉を開け、店員を呼び、席に着いた。


「俺、生ビール。恵美は？」


「私は赤ワインのボトル、このビストロで」


「かしこまりました～！」


ギャル風金髪の若い女の子はブリブリな口調で注文を繰り返し、厨房へ戻った。


店内は静かであまり客は多くなく、ゆっくり話せそうな雰囲気だった。ほんのりとした、赤みがかった、ぼんぼりの灯りがまた落ち着ける店内だった。


金髪ギャルが飲み物を持って帰ってきた。


「おまたせしました～」