最後の血肉晩餐
眼にツーンとくる悪臭はホルマリンの異臭だったようだ。その激臭だけで、喉に胃液が更に込み上げる。


クマノミが入っていた水槽にはホルマリンと鬼の形相で誰かを睨んでいる賢二の生首が黄色く浮かんでいた。


「うううう……うげっ!」


咳止めようとしたが、口の中一杯に酸っぱい胃液があふれ、畳に吐き出してしまった。


「ゲホゲホゲホッ!」


咳き込みながら、また水槽の中身を確認する。


手首、腕、足首、股、胴体、ペニス、ズタズタになった下半身、どの部位か判らない肉の物体が、二つの大きな水槽にぎっしりと積め込んであった。蓋も開かないよう、がっちりと閉めてあるようだった。


理科の実験室で見た、ホルマリン漬けのようだった。
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