私は最強ビンボー女!
だとしたら――



「先祖からずっと・・・受け継がれてきた仕事ってこと?」


おそるおそるそう聞けば、日岡さんは頷いた。


「そういうことだ。だから、根本的には同じだ。

朝霧家からは逃れられない、と説かれてきた。幼い頃から。

だからこそ、諦めているし、怯えているのさ。」



淡々と日岡さんは言い、お祖母ちゃんが淹れたお茶をくいっと飲んだ。


「さすがは葵さん。うまいです。」


「ほほ。あたしだからの。」



穏やかに笑いあう2人をよそに、私の頭脳は働き始めていた。



「部下達は逃げ出そうとか思わなかったんですか?

ほら、全員で逃げちゃえばいいんじゃね、みたいな。」



そう私が聞けば、日岡さんは穏やかな笑みを消し、目を閉じた。



「思わなかった。というより、思えなかった。

お互い、疑いあっていたからな。


自分は手を汚してるんだ、もし、他の奴らが逃げたら、承知しない・・・。

そんな風にしか、誰もが思えなかったんだ。


と同時に、裏切り、殺されるのが怖かったんだ。

自らの手で殺した人の、無念とか苦しみとか、嫌って程知ってるから。


それでいながら、もう無理だと諦めてもいた。


疑って、怯えて、諦めることしかできないと、思い込んでいたから。」



静かに言い終わった後、日岡さんは目を開き、皮肉っぽく笑った。




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