私は最強ビンボー女!
手を伸ばせば・・・温もりが、もらえるのかな・・・。


そう思った時、すでに手に温もりがあることに気が付いた。






――あぁ・・・そうだった。


私が欲しかった温もりは・・・もう、あった。



陽と翼が、くれたんだ。



今更気付くって。


自分に呆れつつも、胸の中が満たされているのを感じた。



言葉で表すことの出来ない、温かい感情がぶわっと押し寄せてきたんだ。



たぶん、私は今、幸せ者なんだと思う。


ずっと欲しかったモノを、もらえたんだもん。






絶対的な危機の中で、幸せを感じるって・・・。


苦笑いしたくなった。



まったく。

どんなことが起こるか、分かったもんじゃないね。







「・・・・・・俺は・・・してほしいことは、分かんねぇ。」


静かな呟きが、沈黙を破った。

足元から聞こえたこの声は、あのスーツ男のモノだ。





< 583 / 836 >

この作品をシェア

pagetop