私は最強ビンボー女!
独り言のようにとつとつと話す葉月。


「私と緋月は察する事もできなかったけれど・・・きっと、幼い頃から視られていたのでしょう。

どちらが跡継ぎにふさわしいか、を。


で、視た結果、一時どんな風な結論になったのか、私は知らない。

ただ、決定的な事が、10歳の誕生日に起こったということは、知ってる。


たぶん、それが最初で最後の、私と緋月への"試験"だったのでしょうね。



10歳の誕生日当日。

私と緋月は誘拐された。」


!?

ゆ、誘拐!?


驚きの声をあげそうになった私を無視して、葉月は抑揚の無い声で話し続ける。



「小野家が仕組んだことよ。本当の誘拐じゃない。

勿論、小野家が仕組んだ事だなんて、私も緋月も知らなかったけれど。


小野家の魂胆は、ピンチになったとき、どう機転を利かせるか、というのを知るためだったようよ。


誘拐は、たくさんの人を雇い、お芝居だなんて考えられないほどだった。

当然、私も緋月もパニックになったわ。


けれど、とある古びた貸家の一室に、閉じ込められた時、なんとか私は冷静になった。

で、緋月に、脱出を試みようと持ちかけたの。


ドアの鍵はかけられたけれど、拘束させられてなかったから、なんとかなるかもって思ったのよ。


けど、緋月は震えながらも首を横に振った。

きっと助けが来るから、待ってればいいって言ってね。


でも私は、できるだけ早くことを収集したかったし、あんまり迷惑かけたくなかった。

だから、逃げようと何度も緋月に言った。」



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