私は最強ビンボー女!
「それでも緋月は頑なに首を振るばかりだった。

きっと助けがくるし、見つかったら嫌だし、何より怖いって、緋月は泣きべそをかいていた。


私はひきたくはなかったし、その頃にはもう、誘拐した奴らに怒りを覚えていたから、一人で脱出を試みた。


結果からいうと、それは案外すんなりとできた。

その部屋、屋根裏部屋へ繋がっている通路があったのよ。


壁に立てかけてあった梯子を使って、屋根裏部屋に行った。

そうしたら、小さめの窓があった。


その窓の下にはちょうど屋根があった。

そこまで大きくなかった私は、するりと窓から屋根に降りて、屋根の上をひやひやしながら歩いた。


そうして、隣の部屋に窓から入って、見張りの目を盗んで外まで行った。

見事、脱出成功だった。



けど、私は残してきた緋月のことが心配だった。

だから、一旦また戻って、どんどん足踏みして見張りの目を逸らして、あの部屋の鍵を取った。


で、なんとかかんとか緋月のいる部屋に戻った。

運よく見張りもいなくて、私は、鍵を開けた。


それで、驚きながらも泣き続ける緋月を従えて、また脱出しようとした。



――けれど、それは必要の無いことだった。


なぜなら、緋月と部屋を出たら、目の前に父親がいたから。



驚く私と緋月の前で、父親は淡々と説明したわ。

この誘拐は仕組んだものだと。


そして―――緋月を、跡取りにすると。」



・・・・・・・・・・・・・え?

私は、思わず首を傾げた。



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