私は最強ビンボー女!
私は・・・・・・“海”になりたかった。



幼い私が望んだモノは、“海”。

切なそうに呟く糞親父に、答えたかった。



『海』って言ったときに『なーに?』って、返したかった。




『アオナ』と呼んでくれないのなら、いっそ私が『海』になればいいんだと思った。


だけど、単純で幼稚な私の考えはすぐに無理だと諦めた。



“アオナ”は“アオナ”で、“海”は“海”。

たとえ『なーに?』と返したとしても、それは糞親父が望んでいたモノではない。



糞親父はぼんやりと、幼い私のコバルトブルーの瞳を見つめたままだった。





そうして。

幼いながらに静かに悟った私がたどり着いた先が“独りで生きていく”こと。


その時から私は、『おとーさん』という言葉と温もりへの望みを捨てた。





だけど。

捨てた望みをお母さんは否応なしに私に思い出させる。




真っ直ぐな光を放つコバルトブルーの瞳。

“海”という名前。



それだけでもう。

悔しさと怒りと悲しみと切なさとやりきれなさが、私を襲う。




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