私は最強ビンボー女!
どこか自嘲を含んだその声は、静かに静かにこの場に響いた。



「俺のやろうとする前に、やる。

それが哉だ。」




彼方。

それじゃ、それじゃあまるで――


彼方も、緋月ちゃんをこんな目にしようと思ってたみたいだよ?



・・・いや、違うか。

思っていたのか。


彼方は、思っていたと言ってるんだ。



『哉がやってなかったら、やってただろうな。』

そう、彼方は言ったのだから。





「俺と哉は、鏡のように。

真逆に見えても、根本は同じ。

俺だって分かってたし分かってんだよ――。


けど、いや、だからこそ、大嫌いだ。

哉のことが。」



吐き捨てるように呟いた彼方は、すっと緋月ちゃんに目を向ける。




「小野緋月。」


「はい。」


静かな、けれど強い意志が込められた掛け声と返事。


彼方が、ふっと、気の抜けたような笑みを浮かべた。




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