*正しい姉弟の切愛事情*



私の背中に腕を回したまま、瑞貴がささやいた。


「とまん、ねぇ」


独り言のように落ちてきた言葉に目を上げると、弟は私の肩に顔を埋めたまま苦しげに言う。


「イヤなら拒めよ一歌」


まるでそれを望んでいるみたいに、声を震わせる。


「じゃないと俺は……」


一段ときつく抱き締められて、私はますます動けなくなった。


「瑞貴……?」




伝わってくる体温に、心臓の音が混じるんじゃないかと思うほど、

きつく、強く、私を包み込んで、



「……俺を、止めてよ――」



弟は、祈るように呻いた。





< 110 / 428 >

この作品をシェア

pagetop