*正しい姉弟の切愛事情*
私の背中に腕を回したまま、瑞貴がささやいた。
「とまん、ねぇ」
独り言のように落ちてきた言葉に目を上げると、弟は私の肩に顔を埋めたまま苦しげに言う。
「イヤなら拒めよ一歌」
まるでそれを望んでいるみたいに、声を震わせる。
「じゃないと俺は……」
一段ときつく抱き締められて、私はますます動けなくなった。
「瑞貴……?」
伝わってくる体温に、心臓の音が混じるんじゃないかと思うほど、
きつく、強く、私を包み込んで、
「……俺を、止めてよ――」
弟は、祈るように呻いた。