*正しい姉弟の切愛事情*

 ◇
 
「一歌ちゃん」


家を出たところで声を掛けられ、振り返るとお隣の奥村さんが自宅の門扉からゴミ袋を手に出てくるところだった。


「あ、おはようございます」


ぺこりと挨拶すると、奥村のおばさんはにっこりと笑って頷く。


「田舎からアスパラが送られてきたの。帰りにでも取りに寄ってくれない?」


恒例のおすそわけ、だ。


「え、いいんですか? ありがとうございます。じゃあ今日の帰りに」


笑顔でそう言うと、奥村さんはふと辺りを窺うように視線を走らせた。

それから声を潜める。



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