*正しい姉弟の切愛事情*
「前々から変な人だとは思ってたのよ。すれ違っても挨拶もしないんだから。ああいうのが変な事件を起こすんじゃないかしら。やあねぇ恐い」
近所の噂話、だ。
真実が何パーセント含まれてるのかも分からないし、半分以上は奥村さんの偏見。
でも、こういう話はあっという間に町内を走り抜ける。
いろんな尾ひれをつけて。
ただ黙って聞いていると、奥村さんは目を細めてまっすぐに私を見た。
「一歌ちゃんもあの人には近づかない方がいいわよ。あなた可愛いんだから、何かあってからじゃ遅いじゃない」
得意げに話すおばさんに静かに「はい」とだけ答える。
今のところ、私はこの人に好意的な目で見られている。
でも、いつそれが覆されるのかは分からない。