*正しい姉弟の切愛事情*
瑞貴はふたつ年下の中学3年生だ。
昔は可愛かったのに、いつの間にあんなナマイキな子になっちゃったんだろう。
人のことを呼び捨てにするのはいいとしても、この頃の態度はちょっとヒドイ。
飴細工のごとく繊細な姉のガラスハートはそろそろ砕け散りそうだ。
台所で手を動かしながら憶測を重ねた。
もしかしてコレは反抗期?
それとも、単に受験のストレスでイラついてるだけ?
お父さんが仕事から帰ってくるまで、この家は私が守らなきゃいけない。
そしてどんなに生意気でも、瑞貴は大事な弟で。
母親代わりでもある私は、瑞貴を優しく包み込んであげなきゃいけない。
それが、お父さんと交わした約束――。
「でも、甘やかすのと優しくするのとは違うしなぁ……」
野菜をざくざくと刻みながら、あの不遜な態度にどう付き合うべきかを考えこんでしまった。