*正しい姉弟の切愛事情*
「わっ」
部屋に入ろうとしたところでいきなり後ろから抱すくめられ、声を上げる。
「みっ、瑞貴?」
振り返ることもできないまま、ただ背中に弟の体温を感じた。
お風呂上りの私の髪に瑞貴の吐息がかかって、心臓が高鳴る。
と、後ろから抱えられるように押し出された。
「えっ」
つんのめるようにして足を踏み出すと、瑞貴は肩でドアを押し広げ部屋に入り込む。
入り口を閉め、今度は私をドアに押し付けた。
「ちょっ――」
もうされるがままだ。
大きな手に顔を押さえ込まれて、身動きも取れない。
唇が、感触も分からないくらい強く押し付けられる。
それが離れたかと思うと、弟は真っ黒の瞳で私を見下ろした。