*正しい姉弟の切愛事情*


「いた――」


口を塞がれて、そのわずかな隙間から、瑞貴が滑り込んでくる。


「っ」


濡れた舌の感触でいつか唇に触れた石川君を思い出し、身体が一瞬こわばった。

けれど――


ためらいながら浸入してくる舌先に、嫌悪感は湧かない。

むしろ、くすぐったくて痺れるような感覚に、何も考えられなくなっていく。



なに、この感覚――


こぼれる吐息が熱い。


実際は味なんかしないのに甘いと感じてしまうほど、


深い、キス――


口内でうごめく瑞貴に、思考がとろけそうになる。




「み、瑞貴!」


心に絡み付く、心地いいけれど得体の知れないものを振り切るように、力いっぱい腕を張った。


私に突き飛ばされる形で、弟は一歩後退する。


< 122 / 428 >

この作品をシェア

pagetop