*正しい姉弟の切愛事情*
頼りないと思っていたその腕は意外に長く、
細いと思っていた体は私をたやすく追い詰められるほどに大きい。
「瑞貴――?」
弟はため息をつくようにつぶやいた。
「本当に、あいつが好きで付き合ってんの?」
穏やかな声で心臓を貫かれる。
ゆっくりと血が滲んでいくみたいに、痛々しく鼓動が響く。
頭によみがえるのは石川君の笑顔だった。
付き合っていくうちに、好きになれれば――
胸の底に隠していた罪悪感を素手で鷲掴みにされた気分だった。
なんで、そんなこと、言うのよ――
弟に組み敷かれた状態で、涙が込み上げてくる。
喉の痛みに必死に堪えていると、瑞貴の追い詰めるようだった目つきが、今度は切なげに歪んだ。