*正しい姉弟の切愛事情*
中間試験最終日の今日、午前で学校から開放された生徒たちはみんな晴れやかな顔で教室を出て行く。
そんな中、教室前の廊下で待っていてくれた石川君はやっぱり清々しい笑みを浮かべて私を見下ろした。
「今日とか、どう? 遊び行かね?」
彼氏の言葉に、心臓が不安定に揺れ動いて、
「ご、ごめん。今日、実は……前々からユリと約束してて……」
とっさにそんな言葉を口にしてしまった。
「あー……そーなんだ」
一瞬だけ残念そうに眉を下げたけれど、石川君はすぐに笑って私に大きな手のひらを見せた。
「じゃ、また今度な」
そう言って、ほかの生徒の波に紛れるように階段へ向かっていく。
広い背中を見送ってほうっと息を吐き出した瞬間、
「約束なんて、してたっけ?」
背後から軽やかな声が響いた。
振り返ると、大きな丸い瞳に見上げられていた。