*正しい姉弟の切愛事情*
「まぁ、あたしの予定は空いてるけどね?」
呆れたようにつぶやいてから、ユリは迷子の子供に向けるような優しい表情を作った。
「うち、来る?」
何度も足を踏み入れたことのあるユリの部屋は、私の部屋よりも少し広く、
水玉模様のベッドにはクマのキャラクターのぬいぐるみが沢山置いてある、女の子らしくてかわいい部屋だ。
「最近変だよね、一歌」
言いながら、テーブルの上に菓子を広げ、
「さっきも、石川君の話全然聞いてないって感じで」
はい、と私にチョコを一粒差し出して、ユリは柔らかく微笑んだ。
「どうしたの? 何か悩んでるなら聞くよ?」
ひとりで抱えきれなくなった荷物を一緒に持ってあげる、と言われているみたいで、心が揺らぐ。