*正しい姉弟の切愛事情*


じっと見下ろされる。

その顔に表情はなかった。



――ああ、持って行けってことか。


無言で子機を受け取り、階段を下りようとしたけれど――


「……」


いまだに腕を掴まれたままで、動くに動けない。


「瑞貴……?」


おそるおそる見上げた顔は、やっぱり感情を戒めたような無の表情で、

けれどその内側には荒ぶった激情が潜んでる、と、

なぜかそう思った。


瑞貴が私の腕を、震えるくらいに強く掴んでいるからかもしれない。


胸の奥で、心臓がドクドク響いてうるさい。
 
今にも抱きしめられるんじゃないかと、何度も思った。
 

けれど、瑞貴は静かに私を解放し、そのまま部屋へと戻っていった。
 


ドアの向こうに消えていく細い背中に、なぜだか無性に、触れたくてたまらなかった。



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