*正しい姉弟の切愛事情*


「何?」

「と、父さん、いないって……?」


言った瞬間、形のいい眉が真ん中に寄る。


「今朝言ってたじゃん。出張だって」


聞いてなかったのかよ、というふうに呆れた顔をしている。


そういえば朝食のときに、出張で地方の支社に行くとかって言っていたような気がする。

帰りは明日の夕方って……。


そんな大事なことを忘れてるなんて。


「大丈夫か?」


私の気持ちを代弁するように、ぽつりと瑞貴がつぶやいた。




とりあえず作りかけだったトマトサラダを完成させて、後は冷凍のグラタンをレンジで温めた。

なんとなく殺風景な食卓に、ついため息が漏れる。


久々だからか、料理の失敗って思った以上に打撃が大きい。

食材も無駄にしちゃったし、鍋も焦げついちゃったし……。



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