*正しい姉弟の切愛事情*
テレビの方を向きながら黙々と口を動かしていた瑞貴がこちらを振り返った。
目はグラタンに向けたまま、ぶっきらぼうに言い放つ。
「たまにはいいんじゃないの適当で。……いつもちゃんとしてんだから」
まるで心の内を読まれたみたいで、心臓が跳ねた。
落ち込んでるって、ばれてたのかな……?
「う、うん……」
すでにテレビに向き直っている弟に頷きかけたけれど、瑞貴は無表情のままで、それ以降は何も喋らなかった。
お父さんがいないと、椅子に片足を立てて座る。
弟の、行儀の悪いクセ。
でも……、
いつもちゃんとしてんだから――
その言葉がなんだか嬉しくて、注意する気になれなかった。
自分の頑張りが、きちんと認められてたみたいで――