*正しい姉弟の切愛事情*
◇
「あら一歌ちゃん、おはよう」
自分で作ったお弁当をカバンにしまい自宅の玄関を出たところで、おばさんに声をかけられた。
「これから学校?」
ゴミ袋を手に親しげな笑みを浮かべるのは右隣の家の奥村さんだ。
大学を出た子供がいると言っていたから、多分うちのお父さんよりも年上だ。
「はい、今日はちょっと早めに行こうと思って」
笑顔で答えると、おばさんも厳格そうなつくりの顔を和らげた。
「そう。頑張ってね」
「ありがとうございます。……あ、そうだ」
思いたっておばさんを見上げる。
「このあいだいただいたタケノコの煮物、すっごく美味しかったです」
そう言うと、おばさんは「あら、ほんと?」と嬉しそうに微笑んだ。
「はい、とても。父も弟もあっという間に食べちゃって」
「まあ」
少しオーバーだったかなと思ったけれど、おばさんは嬉しそうに顔を綻ばせた。