*正しい姉弟の切愛事情*



「あら一歌ちゃん、おはよう」


自分で作ったお弁当をカバンにしまい自宅の玄関を出たところで、おばさんに声をかけられた。


「これから学校?」


ゴミ袋を手に親しげな笑みを浮かべるのは右隣の家の奥村さんだ。

大学を出た子供がいると言っていたから、多分うちのお父さんよりも年上だ。


「はい、今日はちょっと早めに行こうと思って」


笑顔で答えると、おばさんも厳格そうなつくりの顔を和らげた。


「そう。頑張ってね」

「ありがとうございます。……あ、そうだ」
 

思いたっておばさんを見上げる。


「このあいだいただいたタケノコの煮物、すっごく美味しかったです」
 

そう言うと、おばさんは「あら、ほんと?」と嬉しそうに微笑んだ。


「はい、とても。父も弟もあっという間に食べちゃって」

「まあ」
 

少しオーバーだったかなと思ったけれど、おばさんは嬉しそうに顔を綻ばせた。


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