*正しい姉弟の切愛事情*
「ううん。もういいわ。さ、帰ろう一歌」
「え、帰るの?」
先生に挨拶とかしていかないのかな、と思っていると、エリカちゃんは私の腕を取ってスタスタと歩き出した。
「だってユリの男を見に来ただけだもーん」
どうやら本当に「見に」来ただけだったらしい。
駐輪場から自転車をとってくると、エリカちゃんは「あっついわー」と言ってスーツのジャケットを脱いだ。
それだけで、花束からラッピングフィルムを取り去ったみたいに、抑えられていた華やかさが弾ける。
「ねえ、ユリは学校でどんな感じ?」
自転車を押しながら歩いていると隣の大きな目に覗き込まれた。
「ユリ? 別に普通だけど?」
「あの、司藤クンってのとは?」
その言葉に、さっき女子に囲まれて上品に微笑んでいた司藤大地が頭をよぎる。
「あーもうキラキラしてるよ。美男美女の学年公認カップルで」
自分の彼氏にファンクラブがあるっていうのはいったいどんな気分なんだろう。
心配が絶えないのか、それとも誇らしい気持ちなのか。
考えていると、
「ふうん、学年公認、ね」
そうつぶやいてから、エリカちゃんは急に「あっ」と声を上げた。