*正しい姉弟の切愛事情*


「ど、どうしたの?」

「やっばーい。忘れ物しちゃった」


その場に立ち止まって私をじっと見つめてくる。


「え、どうしよう、戻る? 何忘れたの?」


自転車貸そうか? 


と訊く前に、エリカちゃんは言い放った。


「一歌の彼氏見るの忘れた! あと許されない恋のお相手も」


目を爛々と輝かせている彼女に溜息が零れてしまう。


「なんだ、そんなことか」

「なんだとはなによ。てか、どの先生なの? あたしが知らない先生? 女子生徒に強引に迫る、けしからん教師なんていたっけー」

「……」  


完全に面白がってる。

しかも架空の先生と二股かけてると思われているし。


「もういいから、帰ろうエリカちゃん」


再び自転車を進めはじめたとき、カゴに入れた鞄から携帯の着信音が響いた。


< 183 / 428 >

この作品をシェア

pagetop