*正しい姉弟の切愛事情*
「ど、どうしたの?」
「やっばーい。忘れ物しちゃった」
その場に立ち止まって私をじっと見つめてくる。
「え、どうしよう、戻る? 何忘れたの?」
自転車貸そうか?
と訊く前に、エリカちゃんは言い放った。
「一歌の彼氏見るの忘れた! あと許されない恋のお相手も」
目を爛々と輝かせている彼女に溜息が零れてしまう。
「なんだ、そんなことか」
「なんだとはなによ。てか、どの先生なの? あたしが知らない先生? 女子生徒に強引に迫る、けしからん教師なんていたっけー」
「……」
完全に面白がってる。
しかも架空の先生と二股かけてると思われているし。
「もういいから、帰ろうエリカちゃん」
再び自転車を進めはじめたとき、カゴに入れた鞄から携帯の着信音が響いた。