*正しい姉弟の切愛事情*


「体育のバスケで、あいつが剛速球のパス出してきたから」

「取り損ねたんだ?」

「ちげーし。あいつがノーコンなのが悪い」 


毒づきながら卵焼きを口に運ぶ弟に、つい笑ってしまう。


学校や友達の話をするなんて珍しい。


「病院代、あいつに請求すればいいよ」


なおも膨れている瑞貴はつまらなさそうに包帯に包まれた指を眺めた。



手を怪我すると不便だけど、利き手じゃなかったのは幸いだ。

受験生がペンを持てなくなったら大変だし。


「学校の事故だから、保険下りるでしょ。診断書とか必要なのかなぁ」

「明日、先生に聞いてくる」


そう言った後、弟はじっと目を合わせてきた。


「な、なに?」


まっすぐな視線が私の心臓を貫く。

と、


「フロ、入れないんだけど。コレじゃ」


瑞貴は左手をひらひらと掲げて見せた。


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