*正しい姉弟の切愛事情*


「もらいもののタケノコがいっぱいあるから、今度また持っていってあげるわね」

「いいんですか? わぁ、嬉しい」
 

うちに母親がいないことを気遣ってか、奥村さんはときどきおかずをお裾分けしてくれる。

それこそ、私が料理を作れない頃からずっと。


「じゃあ行ってきます」

「行ってらっしゃい」
 

笑顔で別れを告げ、私は自転車に鍵を差し込んだ。

そのまま目立たないように息をつく。




隣の家のしっかり者の長女。


その印象を崩さないように、ちゃんと応対できてたよね……?


心の内でつぶやいて、自転車にまたがった。



< 19 / 428 >

この作品をシェア

pagetop