*正しい姉弟の切愛事情*
21時を過ぎたところでお父さんが帰宅した。
昼間電話で瑞貴の怪我は大丈夫だと伝えていたから、仕事を最後まで片付けてきたらしい。
「瑞貴はどうだ?」
お土産のお菓子をテーブルに置いて食卓に着くお父さんに、夕飯のおかずを温める。
「今お風呂に入ってるよ」
「はくり骨折だって?」
「うん、でも痛みは気にならないみたい。突き指のちょっと重いバージョンって、自分で言ってる」
缶ビールに口をつけて、お父さんは「そうか」と安堵したように眉を下げた。
実際、瑞貴も怪我をしてつらいというよりも、ギブスの状況を楽しんでいるように見える。
私に「洗って」なんて軽口を叩けるくらいだ。
お風呂には結局、使い捨ての簡易なビニール手袋をして入っていた。
濡れないけれど指はちゃんと使えるし、思いついた中では最上の策だと思う。
お風呂場の扉が開いて、肩にバスタオルをかけた瑞貴が姿を現した。