*正しい姉弟の切愛事情*


頭をわしわしと乾かしながら、食卓のお父さんに目を留める。


「あ、おかえり」

「おう、ただいま。指は大丈夫か」

「あー、うん」


答えながら、弟は左手を覆うビニール手袋を外してゴミ箱に投げ入れた。  


「包帯、濡れなかった?」 


おひたしの小鉢をテーブルに置きながら訊くと、形のいい眉がかすかに歪む。


「濡れなかったけど、蒸れた」


そう言って瑞貴は手のひらを空気に絡ませるように手首をスナップさせた。


「あー蒸れか」


そこまでは考えてなかったな。


「ギブスは簡単には外せないからな。だんだんにおってくるぞ」


お父さんはからかうように笑ってビールに口をつける。


「しばらく、辛抱だな」

「うん」


そっけなく返事をすると、弟はそのまま階段を上がりはじめた。

その途中で思い出したように足を止め、振り返る。

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