*正しい姉弟の切愛事情*
「瑞貴」
自分の声が少し固くなってるのが分かる。
ノックをして様子を窺うけれど、中からは物音ひとつしなかった。
またヘッドフォンをして勉強してるのかな。
もう一度声を掛けて反応がないことを確かめると、私は深く息を吐き、思い切ってドアを開いた。
相変わらず雑然とした室内が視界に広がる。
「あれ……?」
真正面に見える机に、瑞貴の背中は見当たらなかった。
どこにいったのかと視線を移して、すぐその姿が目に留まる。
ベッドの上、布団も掛けずに、弟は横になっていた。
寝てる……?
瑞貴はまぶたを下ろし、胸を規則正しく上下させている。
布団にきちんと入っていないし、机にノートや教科書を広げたままのところを見ると、
就寝というよりは仮眠をとっているだけなのかもしれない。
どうしよう、起こすべきかな?
迷いながらひとまず夜食を机の上に置いたとき、
目の端に見覚えのあるものが映った。