*正しい姉弟の切愛事情*
通った鼻筋と、頬に影を落とす長いまつげ。
瑞貴の寝顔は清涼だ。
なぜか、静かな湖面を思いだすくらいに。
かすかに開き、ささやかに呼吸を繰り返している、柔らかな唇――
その寝顔を見つめているだけで、胸が切なく痺れはじめる。
無意識のうちに瑞貴の顔に伸ばしていた手を、あわてて引っ込めた。
だめだ、触れちゃいけない。
そう心で思っても、唇からは勝手に言葉が溢れる。
「みず、き」
気持ちと行動が伴ってない。
思考を無視して体が勝手に動いてしまう。
黒髪で少し隠れた耳元に顔を寄せ、
「夜食、持ってきたよ」
寝息を立てている弟に、暗示でもかけるみたいに、
「寝てる……の?」
声を掛けて、眠りの深さを確かめる。