*正しい姉弟の切愛事情*
瑞貴は反応しなかった。
身じろぎもせず、寝返りも打たず、目を開けることもない。
深い眠りに入ってる。
私は体の横に投げ出された弟の左手に触れた。
包帯に包まれた中指を優しくなぞる。
それでも瑞貴は目を覚まさなかった。
弟が寝ている隙に。
夢の中を漂っているうちに。
一度だけ、触れてもいいかな。
自分の心を満たすために、自分の心に蓋をするために、最後の一度だけなら、許されるかな?
自問自答するように、ゆっくりと、ベッドサイドから身を乗り出す。
音もなく呼吸を繰り返すその唇へと、自分の口を近づける。
秘めやかな行為に、胸が痛いほど打っていた。
滑らかな肌が近づき、目をつぶる。
瑞貴にかかってしまわないように、軽く息を止める。
そして、唇と唇が、合わさる直前――
ひやり、と、頬に冷えた感触が走った。