*正しい姉弟の切愛事情*
気持ちを閉じ込めるために、最後のキスをしようとした。
なんて、言えるわけがない。
「お、起こそうとしただけだよ。せっかく夜食を持ってきたから、温かいうちに食べた方がいい、と思って」
振り返らないまま答えて、ドアノブに手を掛ける。と、
「苦しいイイワケ」
背後から呆れた声が響いた。
振り返ると、瑞貴がベッドから降りて近づいてくる。
「い、言い訳なんかじゃ……」
「顔、赤いし」
真正面に立ち、弟は目を細める。
そのまっすぐな瞳に威圧され、唇が震えた。
「な、なによ」
絡まる視線に身体が一層熱くなっていく。
重苦しい空気に耐え切れず逃げ出したいと思ったとき、瑞貴の小さな唇が開いた。
「……一歌さぁ、俺に言いたいことがあるんじゃないの」
「な……なんのこと?」
作り笑いをすると、
「とぼけんなよ」
弟は語気を強めた。