*正しい姉弟の切愛事情*
「一歌、最近おかしいから。急に泣いたり、変に赤くなったり、さっきの風呂の冗談にしたって、単に家族としか思ってないなら、洗ってって言ったくらいであんなに過剰に反応しないんじゃないの」
低い声に衣服を剥がされていくような気分だ。
全部……全部見抜かれてる。
隠しきれずに漏れ出した私の浅はかな気持ちを、瑞貴は抜かりなく拾いあげていた。
「俺のこと、意識してるのかなって思ったら、確かめずにはいらんなくて」
騙してごめん、とひと言つぶやいて、瑞貴は目に力を込める。
「けど一歌、俺にキス、しようとしたよね」
まっすぐな言葉は、私の心臓を容赦なく貫く。
「し、してない」
口で否定したところで、瑞貴をあざむくのは難しいだろうと分かっていた。
目の前に立っているのは、もう子供じゃない、15歳で、身体も男らしく変貌を遂げつつある、
私よりもずっと賢い弟だ。
「ただ意識してるだけかと思ったけど、一歌、もしかして俺のこと――」
鼓動が信じられないくらい早かった。