*正しい姉弟の切愛事情*
どうしよう。
どうやったら私の気持ちを明かそうとする瑞貴から逃れられるだろう。
絶対に、絶対に、
この感情は知られちゃいけないのに。
「……違うよ。瑞貴の気のせい」
なるべく無感情につぶやくと、弟は溜息をこぼした。
「はぁーもう、じれったいな。いい加減、本当のこと言わないと――」
一層低くなった鋭い声音に、不穏な気配が漂う。
私が顔を上げた瞬間、瑞貴は包帯が捲かれた左手の指をぐいっと掴みあげた。
「……この指、折るから」
「……はあ? ちょっと、何言って――」
私の声を無視し、瑞貴は自分の指を本来曲がらない方向へと傾けた。
ギブスで固定された指が、不自然な方向へと反りあがる。