*正しい姉弟の切愛事情*
「なっ、なにしてんの!」
付け根から甲に向けて押し上げられた指が、ぎりぎりと軋む。
強く掴んでいるせいで、固定された包帯は緩み始めていた。
「本当の、こと、言って」
歪んだ口元からこぼれた声が、痛みに震えてる。
「やめなさい!」
止めようと手を伸ばした私を振り払い、瑞貴は一歩後退した。
「……一歌が言わなきゃ、やめない」
血の気の引いた顔で、なおも見据えてくる。
自分の指なんてどうなってもいいとでも言うように、
弟はまっすぐの心を強引にぶつけてくる。
「ば、バカじゃないの!」
思わず叫ぶと、瑞貴も呼応するように声を荒げた。
「あぁ馬鹿だよ!」
突然弟の顔に表れた荒々しい表情に、言葉が詰まる。
「好きな女が自分のこと好きかもしれないなら、馬鹿みたいに必死になって当然だろ!」
言いながら、瑞貴はさらに強く指を掴みあげた。
激情に歪んだ顔が、苦痛に染まりはじめる。