＊正しい姉弟の切愛事情＊

　

目を開けようとする弟に顔を近づけ、自分からその唇を覆う。


「――」


ほんの一瞬の出来事なのに、柔らかな感触が懐かしい。

唇を離すと、瑞貴の口は呆気に取られたようにぽかんと開いた。


「一歌……」

「バカっ」


言葉とともに溢れた涙が私の頬を滑り落ちる。


「バカじゃないの、もう！」


気が抜けた顔で弟は私を見下ろしていた。


「こんなの、脅迫じゃない！」


瑞貴の傷ついた手を覆ったまま、涙はとめどなく落ちていく。


「一歌」


顔を上げると、困惑した表情が目に入った。


「俺のこと――」


確認するような言葉に、ますます涙が込み上げる。

これは抱えてはいけない感情なのだと、ただ漠然と思っているだけでは、走り出した気持ちは止まらないんだ。