*正しい姉弟の切愛事情*



5月の日差しは柔らかく、吸い込む空気には若葉の匂いが混じってる。

屋上の隅っこでパンにかぶりついた石川君は、口をモゴモゴ動かしながら隣の私を見た。


「いちかって、弟と年いくつ離れてんの?」


お弁当をつついていた箸を止め苦笑いする。


「2つだよ。あのコ今年受験だから接し方がちょっと難しくて……」


石川君は胡坐をかきながら「あーなるほど」とつぶやいた。


「受験って相当ストレス溜まるもんな。俺も酷かったよ」

「そうなの?」
 

昨日のことを怒っていないらしい石川君にホッとして身を乗り出す。

貴重な男子の意見。
参考のために聞いておきたい。

石川君はパンにかぶりつき昔を思い出すように少しだけ首を傾けた。


「親に『うぜぇ』とか『くそばばぁ』とか『死ね』とか毎日のように言ってたし」

「……」
 

それを聞いて驚きながらも、心の底で安堵する。


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