*正しい姉弟の切愛事情*
おかしな発言が悔やまれる。
逃げ出したくなって後ずさりをすると、弟はため息をついた。
「……ないよ」
その声に顔を上げた瞬間、目が合う。
そむけられないほどの強い目線に心臓が跳ねた。
そのまま、弟は私の腕を掴む。
「一歌――」
小さな唇が、その先の言葉を言う前に、
「あああしたのお弁当の準備、してこなきゃ」
私は作り笑いを浮かべて瑞貴の手から逃れた。
「もう遅いから、勉強もほどほどにね」
強引に話を打ち切って、ドアに手をかける。
「おやすみ」
そう言うと、
瑞貴は固まった身体をほぐすように呼吸をして、静かに答えた。
「おやすみ」