*正しい姉弟の切愛事情*
骨折といっても完全に折れたのではなく剥がれる程度だったのに、無茶をしたせいで少し悪化した。
本当のこと言わないと、この指、折る――
あのとき瑞貴の顔に漂った一瞬の狂気。
今はすっかり消え去っているけれど、私は嘘をつけないんだ、と改めて感じる。
どんなに巧妙に気持ちを誤魔化そうとしても、まっすぐで聡明な瑞貴の瞳は、私の心をすぐに見抜いてしまう。
「一歌」
呼ばれて振り返った瞬間、唇が触れ合った。
それは、ちゅっと音を立てそうな軽いキス。
「ちょっと」
こんなとこで、と咎めようとした私に、瑞貴は柔らかく微笑する。
「おやすみ」
波立つ感情をあっという間に鎮めてしまう表情だった。