*正しい姉弟の切愛事情*
 

告げるタイミングがなかなか難しい。



そんなふうに先延ばしにしていたせいで、期末試験が近づいていた。
 

屋上でお弁当を食べるには日差しがきつくなってきたし、

かといって他にふたりだけでお昼を過ごせる場所もない。



なんていう理由ともいえない理由を言い訳に使って、私は石川君との時間を避けている。



でも、そろそろ限界だ。






「いちか」


下駄箱で靴を履き替えていると、後ろから声をかけられた。

ふわふわの茶髪を揺らしながら、石川君はほがらかな笑みを浮かべる。

思いがけない顔に出くわして、私は動揺してしまった。


石川君と顔を合わさないように、SHRが終わってすぐ教室を出たというのに。


「今日は保健委員の手伝い、ねーの?」

「あ、あの、うん」
 

ここ最近の言い訳にしていた、保健委員――ユリの手伝い。
 
そんなもの、本当は最初からないのだけど。


「じゃ、一緒に帰ろうぜ。家まで送って――」

「あの、駅まで歩こう」
 

石川君の言葉を遮って提案すると、彼はにかっと白い歯を見せた。


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