*正しい姉弟の切愛事情*
強い日差しに晒されて、身体が焼け焦げてしまいそうだ。
こめかみから落ちる汗は、暑さよりも心の焦りを反映してる。
一瞬の沈黙を孕んだ重い空気。
そして、
「あれ、こっちの道から帰れんの?」
石川君は瞬きをした。
「……え?」
見ると、長い指が分かれ道を指差している。
「ここで別れるってことは、こっちの道から自転車乗るんでしょ。道狭くね? 平気?」
「え、いや、あの」
「なんか急いでた? ごめんなー付き合わせて」
「や、そうじゃなくて」
焦っている私に眩しい笑顔を向け、石川君は手をひらひらと振る。
「久々に一緒帰れて嬉しかったよ。じゃーまた明日なー」
「あの、あの……」
駅に向かって遠ざかっていく大きな背中に、虚しく呼びかける。
ち……ちがうんですけど……。
わかれるって、岐路を行くってことじゃなくて――
心の中で説明してももう遅い。
「うぅ」
がくりと肩を落とす私を、降り注ぐ日差しが容赦なく焦がしていった。