*正しい姉弟の切愛事情*


強い日差しに晒されて、身体が焼け焦げてしまいそうだ。

こめかみから落ちる汗は、暑さよりも心の焦りを反映してる。
 

一瞬の沈黙を孕んだ重い空気。

そして、


「あれ、こっちの道から帰れんの?」


石川君は瞬きをした。


「……え?」
 

見ると、長い指が分かれ道を指差している。


「ここで別れるってことは、こっちの道から自転車乗るんでしょ。道狭くね? 平気?」

「え、いや、あの」

「なんか急いでた? ごめんなー付き合わせて」

「や、そうじゃなくて」
 

焦っている私に眩しい笑顔を向け、石川君は手をひらひらと振る。


「久々に一緒帰れて嬉しかったよ。じゃーまた明日なー」

「あの、あの……」


駅に向かって遠ざかっていく大きな背中に、虚しく呼びかける。
 

ち……ちがうんですけど……。
 
わかれるって、岐路を行くってことじゃなくて――
 

心の中で説明してももう遅い。


「うぅ」 


がくりと肩を落とす私を、降り注ぐ日差しが容赦なく焦がしていった。


< 224 / 428 >

この作品をシェア

pagetop